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大阪地方裁判所 平成12年(レ)18号 判決 2000年5月22日

A事件控訴人

尾花弘堂

被控訴人

三井海上火災保険株式会社

B事件控訴人

尾花弘堂

被控訴人

西村仁志

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

(A事件)

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人西村仁志は、控訴人に対し、二七万円及びこれに対する平成八年一一月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(B事件)

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人三井海上火災保険株式会社の請求を棄却する。

第二事案の概要

本件は、控訴人運転の普通乗用自動車(以下「控訴人車両」という。)とB事件被控訴人西村仁志(以下「被控訴人西村」という。)運転の普通乗用自動車(以下「西村車両」という。)が信号機による交通整理の行われていない交差点において衝突した事故について、控訴人が被控訴人西村に対し、民法七〇九条に基づき損害賠償を請求し(B事件)、一方、A事件被控訴人三井海上火災保険株式会社(以下「被控訴人三井海上」という。)が控訴人に対し、西村車両の修理費用を支払ったことを理由に、商法六六二条により被控訴人西村の控訴人に対する民法七〇九条の損害賠償請求権を取得したとして、同損害賠償請求権に基づき、控訴人に対し、損害賠償を請求した(A事件)事案である。

一  争いのない事実等(証拠により認定する場合には証拠を示す。)

(一)  事故(以下「本件事故」という。)の発生

日時 平成八年一一月二四日午後五時二四分ころ

場所 大阪市東住吉区照ケ丘矢田二丁目九番一八号先路上(以下「本件交差点」という。)

控訴人車両 普通乗用自動車(なにわ五五た九七六二)

運転者 控訴人

西村車両 普通乗用自動車(和泉五三ゆ二二六八)

運転者 被控訴人西村

事故態様 本件交差点付近の概況は、別紙交通事故現場見取図(以下「別紙図面」という。)のとおりであり、交通整理の行われていない交差点を東から西に進行した控訴人車両と南から北に進行した西村車両が交差点内で衝突した。

(二)  保険契約の締結(A事件甲三)

被控訴人西村と同三井海上は、平成八年一〇月一日、西村車両について、自動車保険契約を締結した。

(三)  保険金の支払(A事件甲二五、二六)

被控訴人三井海上は、平成九年一月二九日、上記契約に基づき、訴外日産プリンス大阪販売株式会社に対し、西村車両の修理代金七八万二八〇〇円を支払った。

二  争点

本件の争点は、<1>本件事故態様及び過失の有無と割合、<2>控訴人及び被控訴人らの損害である。

(一)  本件事故態様及び過失割合

(控訴人の主張)

控訴人車両は、本件交差点手前(別紙図面<1>)で、前車に続いて一時停止した後、前車が発進し左折を始めたので、西村車両も前方左右の安全を確かめて発進したが、前車が交差点内(別紙図面)で停止したため、ブレーキを踏んで、交差点内(別紙図面<4>)で停止した。その直後に西村車両の右側前部が控訴人車両の左側前部に衝突した。

本件事故当時、本件交差点付近には駐車車両(別紙図面(甲)、(乙))があり、東から南へ左折する車両(別紙図面)が交差点内を進行していたために右前方の見通しが悪かったのであるから、被控訴人西村は、左折車との接触はもとより、左折車の後方から交差点を西方に直進する車両等との衝突を避けるため、徐行するなどして、安全な方法で本件交差点内を進行する注意義務があった。しかし、同人はこれを怠り、進路前方約三mに至って初めて控訴人車両を発見し、本件事故を発生させた。

(被控訴人らの主張)

控訴人は、本件交差点内(別紙図面<4>)で停車し、その停車直後に西村車両が衝突してきた旨の主張をするが、控訴人車両が本件交差点内で停車した後に西村車両と衝突した事実はない。控訴人車両は、本件交差点手前(別紙図面<2>)で停止後、再発進して本件交差点内(別紙図面<3>)で初めて西村車両(別紙図面<ウ>)を発見してブレーキを踏んだが、間に合わず、別紙図面<4>において西村車両と衝突し、その後、停車(別紙図面<5>)したものである。一方、被控訴人西村は、本件交差点手前(別紙図面<ア>)で減速し、その直後(別紙図面<イ>)に、東から右へ左折しようとする車両(別紙図面)が停車しているのを認めた。そして、本件交差点入口付近(別紙図面<ウ>)で交差点内を西進中の控訴人車両(別紙図面<3>)を発見し、ブレーキをかけたが間に合わず、同車両と衝突した(別紙図面<エ>)。

控訴人は、一時停止の規制があり、本件交差点では左方に対する見通しが悪かったのであるから、左方の安全を確認して、交差道路を通行する車両の進行を妨害しない義務があるにもにもかかわらず、これを怠り、漫然と本件交差点に進入した過失により本件事故を発生させた。控訴人の過失割合は、八割が相当である。

(二)  損害額

ⅰ 控訴人車両の物損

(控訴人の主張)

控訴人車両の破損を修理するのに五一万〇二二六円を要するところ、修理をしても車体の基本的構造部に重大な損傷が残り(シャーシーのゆがみ、ハンドルのぶれ等)、買い換えが相当であった。事故直前の控訴人車両の中古車評価価格は三〇万円であったが、事故後のスクラップ価格は三万円であった。よって、控訴人が本件事故により受けた財産上の損害は、二七万円である。

(被控訴人西村の主張)

控訴人車両の初度登録は、昭和五九年七月である。控訴人車両と同一車種の一〇年経過時点での中古車価格は、五〇〇〇円である。一〇年以上経過した中古車は、市場性がなく市場価格はないと考えられるが、強いて算定するとすれば、最大値としては、新車価格(一二三万円)の一割である一二万三〇〇〇円と考えられ、その範囲内の程度が妥当である。

ⅱ 西村車両の物損 七八万二八〇〇円

(被控訴人三井海上の主張)

西村車両修理代金として、七八万二八〇〇円を要した。

ⅲ 被控訴人三井海上の弁護士費用 二一万円

(被控訴人三井海上の主張)

被控訴人三井海上と被控訴人代理人は、本件訴訟追行のため、着手金及び成功報酬金各一〇万円並びにこれらに対する消費税各五〇〇〇円の合計二一万円の弁護士費用を支払う旨合意した。この費用も本件事故と相当因果関係のある損害である。

第三争点に対する判断

一  本件事故態様及び過失割合(争点<1>)について

(一)  証拠(A事件甲一、二、四ないし二四、二八、乙一ないし三、五、B事件甲一ないし三、五、乙一)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下のとおり認められる。

本件事故現場の付近の概況は、別紙図面のとおりであり、東西道路と南北道路の交差する信号機のない交差点である。東西道路は、中央線により区切られた片側一車線の道路であり、片側道路幅はそれぞれ三・一mである。本件交差点の東側入口及び西側入口には、それぞれ一時停止線及び一時停止標識がある。一方、南北道路は、中央線により区切られた片側一車線の道路であり、西側には、幅一・五mの歩道があり、車道(本件交差点南側)は、片側それぞれ幅二・五ないし二・七mであり、本件交差点の南側及び北側入口には、それぞれ停止線がある。

本件事故当時、本件交差点内は照明が点灯して明るく、また、東西道路の西行車線上の交差点手前(東側)には駐車車両(別紙図面(甲))があり、南北道路の南行車線上の交差点先(南側)にも駐車車両(別紙図面(乙))があった。

控訴人は、控訴人車両を運転し、東西道路を東から本件交差点に向かい、その前方の先行車両に続いて走行していたが、走行車線前方に駐車車両(別紙図面(甲))があったため、それを避けるために、先行車両に続いて右側対抗車線にはみ出して進行した。そして、先行車両が本件交差点手前(別紙図面)で停車したため、控訴人車両もその後方(別紙図面<1>)で停車した。その後、先行車両は、本件交差点を左折すべく本件交差点内(別紙図面)に進行したが、控訴人車両は、本件交差点手前(別紙図面<2>)で再度停車した。その後、先行車両は別紙図面の地点まで進行したが、前方に駐車車両(別紙図面(乙))があり、南から北に西村車両が対抗進行してきていたため、別紙図面の地点で停車した。この間、控訴人車両は別紙図面<2>の地点から低速で再発進し、先行車両が別紙図面の地点で停車するのを見ながら本件交差点内(別紙図面<3>)まで進行したとき、南から北に向けて進行してくる西村車両を発見し、危険を感じて急制動の措置をとったが、間に合わず、本件交差点中央付近(別紙図面<4>)で西村車両と衝突した。

一方、被控訴人西村は、西村車両を運転して南から本件交差点に向かって走行していたが、対向車があったため減速したうえ、本件交差点手前(別紙図面<イ>)で、前方対向車線の駐車車両(別紙図面(乙))の奥に、自車の通過を待っている車両(別紙図面)を認め、別紙図面<ウ>の地点まで進行したとき、本件交差点を東から西に向かって(別紙図面<3>から<4>に)進行中の控訴人車両を発見し、急制動の措置をとったが、間に合わず、別紙図面<4>で控訴人車両の左前部と西村車両の右前部が衝突し、別紙図面<オ>の地点で停車した。

(二)  以上認定事実からすれば、控訴人進行車線側には一時停止の標識があったのであるから、控訴人は、本件交差点に進入するに際して、南北道路を進行中の車両の進行の妨げとならないように左右の安全を確認すべきであったにもかかわらず、十分に確認しないで交差点に進入したものといえる。具体的には、控訴人は、そもそも一時停止の規則があるのだから、一旦停止をして、左右の安全を十分に確認すべきであったうえ、その先行車両が左折中に別紙図面の地点で停車したのを認識した時点で、左方(南側)から本件交差点に進入する車両があることを容易に予測できるから、本件交差点中央(別紙図面<4>)よりもより東側(別紙図面<3>から<4>の間)で一時停止するなどして、南北道路を進行する車両の通過を待つべきであった。しかし、南北車両の通過を待たずに進行した過失がある。

一方、被控訴人西村は、左折車両(別紙図面)のため本件交差点右側(東側)の見通しが悪かったのであるから、より減速するなどして、右方を確認しながら進行すべきであったのに、これを怠った過失がある。

以上、本件事故は、控訴人と被控訴人西村の注意義務違反が競合して発生したものと認められるが、控訴人と被控訴人西村の注意義務違反を比較すれば、控訴人の注意義務違反の方がより重いといえるところ、控訴人の過失割合を七、被控訴人西村の過失割合を三とするのが相当である。

二  損害額(争点<2>)について

(一)  控訴人車両の物損

証拠(B事件甲二、四、六、乙三ないし六、A事件乙一、四)を総合すれば、控訴人車両の本件事故当時の評価額は一二万三〇〇〇円と認められる。

控訴人は、事故直前の控訴人車両の中古車評価価格は三〇万円であった旨主張するが、使用年数・中古車価格などを考えると、それだけの客観的価値を有していたとは認められない。

(二)  西村車両の物損

証拠(A事件甲四ないし二五、乙一、B事件甲二)によれば、本件事故による西村車両の修理代として、七八万二八〇〇円を要したことが認められる。

(三)  被控訴人三井海上の弁護士費用

被控訴人三井海上の弁護士費用については、本件事故との間に相当因果関係を認めるべき事情は認められない。

三  よって、原判決はいずれも相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判官 中路義彦 齋藤清文 下馬場直志)

交通事故現場見取図